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イルカ物語

イルカ物語

イルカは世界各地で古代より神聖な生き物として大切にされてきました。ここではその一部を紹介したいと思います。

 

イルカの神話


イルカの歌の歌詞はここをクリック

 

イルカと言えば、ギリシャ神話。ギリシャでは、イルカ達は、敬われ親しまれた動物で、たくさんの古典が残っています。アテネのデルフィス(英語:ドルフィン)とう場所には、太陽神アポロンの神殿があり、デルフィスとは子宮という意味で、ここが世界の中心と考えられてました。ここで、神のお告げを受けていたといいます。

 

ここには石に刻まれた最古の楽譜が残っていて、古代ギリシャでは、音楽は神と交流する方法だったようです。そして、人々は、子宮のある海の動物としてイルカを敬っていました。また、ある宗教では、人間の魂が転生を繰り返し、高いレベルへ上がるためには、イルカのレベルを通過しなければいけないと言われていました。こうした意味でもイルカは、すべての魂の子宮とも考えられていました。

 

 

クジラとイルカの心理学ーimago
イルカを穫るのは、いまわしい罪
ことさらにイルカを殺す者は
もはや神々に近づく資格がない
神々は、かれらの供物を嘉したまわぬ
かれらが触れれば祭壇が穢れる

 

     ーオッピノアス(紀元2世紀)

 

このようにイルカ殺しが宗教的な罪でさえあったのは、彼らの戯れる姿が好転の吉兆であったためばかりではない。イルカはもっと積極的に人間と深いかかわりがあり、神々に近い存在だったのである。


「ホメロスの讃歌- アポロンの讃歌」より抜粋
アポロンが大地母神の聖域を我がものとした後、自分に使える神官として誰をつれてくるべきかを思いめぐらした。折しもクレタ人の貿易船がペロポネソス半島の西南端にある町、ピュロスへ向かいつつあった。アポロンは、巨大なイルカに身を変えて海中から躍り上がり、船の上に横たわった。近づく者を跳ね飛ばし、船をはげしく揺すった。しかも舵が利かなくなり、船は目的地のピュロスを通り過ぎてペロポネソス半島の海岸を右手に見ながら進み、コリントス湾に入って、遂にパルナッソスの山のふもと、デルフォイの神域に近いクリサの砂浜に乗り上げた。

 

「異国の者たちよ、そなたたちはもう二度とクレタにもどることはない。この地にとどまって、人々の崇めるわが神殿に使えよ。まず船を陸に曳き上げてから、渚に祭壇を築け私がイルカに身を変えて船に躍り上がったことに因み、アポロン・デフィ二オス(イルカ神アポロン)の呼び名で祈りを捧げよ」


これはデルフォイという神域の地名とデルフィス(イルカ)とを結びつける民間語源説の神話版ともいえよう。しかし、イルカに変身したアポロンが自分を祀る神官としてクレタ人を連れてきたという伝承の背後には、クレタにはイルカを祀る祭儀があったことが指摘されている。クレタ人の海上商業活動にともなって、イルカ崇拝もギリシャ本土までひろまったのであろう。アポロンは、古層の女神の神域を乗っ取った新参の神だったから、予言や医療などの「本業」の他に、イルカ崇拝の祭儀を吸収して、航海や貿易を保護する神としての属性を自分に付け加えたと考えられる。


アレクサンドロス大王の時代に起こった実話
イアスス市のある少年に、イルカが恋をした。海でそのイルカと戯れたあと、少年が岸にあがって立ち去ろうとすると、イルカは、岸へ向って懸命に追いすがり、砂にのしあがって息絶えてしまった。アレクサンドロスは、そのイルカの深い愛情を神寵のしるしと解して、その少年をバビロンにおけるポセイドンの神官に任じた。

 

イルカに愛されたのは神に愛されたことだ ー この観念にはあきらかに地中海世界のイルカ崇拝の名残がみられる。 


詩人音楽家、竪琴の名手アリオンの話
アリオンは、南イタリアとシチリアでの音楽コンクールに出場し、多くの賞金をえてコリントスの船で帰国の途についた。ところが、船乗り共は彼を殺して金品を奪おうとした。彼は、今生の名残りに一曲奏することを乞い、舞台衣装を身につけて、竪琴を手にとり、高い調子の祭礼歌を歌い、歌い終わるや海に身をなげた。船は、コリントスに向けて走り去り、アリオンは、イルカに助けられて、タイナロン岬(ペロポネソス半島南端)に運ばれた。アリオンはそのから船より一足先にコリントスに帰り、ペリアンドロスにそのふしぎな命拾いの話をした。船がコリントスに戻ってきたとき、ペリアンドロスは、何食わぬ顔でアリオンの安否をたずねた。船乗り共が、アリオンはまだ南イタリアにおります、と答えると、当のアリオンが姿を現し、船乗り共は恐れ入って罪に服した。

 

アリオンは、竪琴を奏しつつ歌い、その音楽の魅力によってイルカを惹きつけた。イルカは、格別に心のある動物であって、人間の愛情深い友であり、時に救助者ともなった。

 

このようにイルカに親愛の情を抱き、宗教的な崇敬の念さえ覚えていた古代ギリシャ以来の伝統は、教説や個々の伝説は忘れられても感情的な底流として、今日もヨーロッパに根強く生き続けているようだ。


「クジラとイルカの心理学ーimago ー 神話の海のイルカたち 多田智満子